何を試しているか
Claude Artifacts(Anthropic)と Gemini Canvas(Google)で、インタラクティブな教育・学習ビジュアライザーを 対話だけで生成 し、公開可能な単体ページとして配布する試作。HTML + JavaScript + Canvas/SVG/Web Audio の自己完結したミニアプリを、自然言語の指示と数往復のレビューだけで仕上げる速度と、両プラットフォームの特性差を検証している。
掲載している 5 試作は、2026 年 2 月の 早稲田塾 AI プログラム 2026 集中講座の中で、受講生に「AI と数往復話しただけで、これくらいのものは作れる」という事例として実演で見せたもの。教材として磨き込んだ完成品ではなく、講座中のデモから生まれた素材をそのまま Lab に置いている。
Claude Artifacts による試作
試作 00: Matrix Transform Visualizer
行列による線形変換をリアルタイムで可視化するツール。a, b, c, d をスライダーで動かすと、基底ベクトル ê₁, ê₂ と任意ベクトル Av の変換結果が即時に追従する。det(A) を表示し、面積拡大率も自動計算。
試作 01: 三角関数ビジュアライザー
y = A × sin(Bθ + C) + D のパラメータ操作 + リサージュ図形のタブ切替。単位円上の角度動線と、対応する sin / cos / tan のグラフを同時に表示する。
Gemini Canvas による試作
Gemini Canvas で、より「物理現象に踏み込んだ」インタラクティブツールを生成。Web Audio API を使った音声合成と、Chart.js + MathJax を組み合わせた数式可視化の両方に対応できることを確認した。
試作 02: 正弦波 (Sine Wave) 実験室
y(t) = A × sin(2π × f × t) の振幅 A と周波数 f をスライダーで操作。Web Audio API で実際にサイン波を 音として再生 しつつ、AnalyserNode 経由で取得した波形を canvas にリアルタイム描画する。「式・音・波形」の 3 表現を同時に体感できる学習ツール。
試作 03: 二次関数グラフシミュレーター
y = ax² + bx + c の係数 a, b, c をスライダーで操作。Chart.js で曲線を即時再描画し、MathJax で数式を組版表示する。中学・高校の関数学習で「係数を動かすと放物線がどう変わるか」を直感的に体験できる教材。
試作 04: 追いつき算シミュレーション(小学生算数教材)
「太郎くんが 75 m/分で出発、18 分後に途中で速度を 54 m/分に落とす。次郎くんは 18 分後に自転車(144 m/分)で追いかけ、3024 m 先のゴールへ向かう」という、典型的な 追いつき算 の問題を時刻スライダーで動かしながら可視化する教材。トラック上の 2 人のアイコンと、ダイヤグラム(時間-距離グラフ)が同期して動き、追い越し点(33 分・2160 m)が緑のドットで明示される。
「速度が途中で変わる追いつき算」は文章題として子どもがつまずきやすい典型問題。式と図とアニメーションを同じ時刻軸で重ねて見せる ことで、なぜ 33 分で追いつくのかが触って確かめられる。
何が分かったか
- 両プラットフォームとも 「教えるための小さな道具」を量産する用途 に強い。1 つのビジュアライザーをほぼ会話 1 セッションで完成可能
- 自己完結した単一 HTML として配信されるため、ホスティング不要・サーバー不要。教材 URL として配るだけで動く
- 数式・物理現象・音響などの視覚化は AI 生成と相性が良い(明確な仕様 + 既知のレンダリング技法)。一方、複雑な状態管理を伴う多画面アプリは現状向かない
- 教える側にとって「プロンプトで教材を即起こせる」のは時間コストの圧縮効果が大きい。授業準備のあり方を変えうる
- 公開 URL がそのまま教材になる構造は、教育機関の LMS への組み込みにも向く
Claude Artifacts と Gemini Canvas の比較メモ
両プラットフォームを 4 試作で行き来して感じた特性差:
| 項目 | Claude Artifacts | Gemini Canvas |
|---|---|---|
| 公開 URL の閲覧 | 誰でも可(auth 不要) | Google ログイン必須 |
| デフォルトの見栄え | ダーク基調・コードよりのトーン | Tailwind を多用したライト基調 |
| 外部 CDN 連携 | tailwindcss / フォント等は通る | Chart.js / MathJax / Tailwind の併用も問題なし |
| Web Audio など high-API | 可(試したのは描画系のみ) | 動作確認済(正弦波の AudioContext) |
| 反映の速さ・対話安定性 | 1 セッション完結が滑らか | 多少のリトライで意図に到達 |
→ 配布前提(ログイン不要)なら Claude Artifacts、Google エコシステム前提(学校の Workspace 内など)なら Gemini Canvas、と使い分けが効く。
制限・位置づけ
- これらは 教育用途の小規模試作 であり、商用配布・受託対応の対象ではない
- AI 生成コードであるため長期保守は不向き(必要なら同条件で再生成する運用を想定)
- 知見は自社の AI コンテンツ制作(/products/ai-content-production/)における 「AI 生成成果物のディレクション」 経験として蓄積している